相続人の調査
相続人調査とは、被相続人(相続をする側)と相続人(相続を受ける側)全員の戸籍を集めて、相続人が誰であるかを確定させることをいいます。
被相続人については、生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を集めます。
戸籍は、何度も戸籍法の改正によってその様式が変わっています。
・明治5年式の戸籍(壬申戸籍)(身分に関する記載のある戸籍ですので、現在では取得できません)
・明治19年式の戸籍
・明治31年式の戸籍
・大正4年式の戸籍
・昭和23年式の戸籍
・平成6年式の戸籍(コンピュータ化された現在の戸籍)
コンピュータ化される前の戸籍を改正原戸籍(「かいせいげんこせき」又は「かいせいはらこせき」)と呼びます。
それぞれの戸籍には、「いつ」戸籍法の改正によって新しく戸籍が作られたのか、「いつ」婚姻などの理由によって元の戸籍を抜けて新しく戸籍を作ったのか、その時期と理由が書かれています。
これらの日付が生まれたときから現在に至るまで、全て繋がった形で集めていきます。
戸籍を集める手順は、最後の本籍地の市役所に対して「生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍・原戸籍・除籍謄本」を請求します。(もし最後の本籍地がどこなのか分からない場合は、住民票の除票を「本籍地の記載有り」にして取得しましょう。)
ただし、被相続人の戸籍謄本は、亡くなってから10日ほど経過した後に取得するものとされています。
その理由は、被相続人の戸籍に死亡の事実が反映されるのは、死亡届を提出した後だからです。
死亡届は原則として「死亡した事実を知った日から7日以内」にしなければなりません。ですので、10日経過後というのはあくまで目安ですので、大切なのは「死亡の事実が反映された戸籍謄本を取得する」ということです。
集めた戸籍には、本籍地が途中で変わっている場合、そのことも記載されています。「どこから移ってきたのか」の記載を見つけて、「戸籍を追っていく」という流れになります。
そうして全てのつながった戸籍が集まったら、養子縁組が組まれているのか、子の認知がされているのかなどを「身分事項」の欄から確認し、相続人が誰なのかを確定することができます。これが相続人の調査です。
確定した相続人の現在の戸籍は、被相続人の亡くなった日よりも後、つまり相続発生後に取得します。そうでなければ、相続が発生した時点で間違いなく相続人であったかどうか、相続人としての確かな情報を確認できないからです。
※令和元年5月24日に戸籍法の改正案が国会で成立し、本籍地でない市区町村の戸籍も、どの市役所でも取得できるようになるとされています。この改正案は2024年に施行される予定ですが、まだはっきりとした日にちは決まっていません。
運用が開始されるまで、実際にどのような流れとなるかはわかりませんが、大いに期待されている改正案です。
相続についてお考えの方、お悩みの方はまずご相談(無料)ください。
相続財産の調査
相続人の利益になる相続財産のことを「プラスの財産」
相続人の負担になる財産のことを「マイナスの財産」 とここでは呼びます。
相続財産として何があるのか、全体を把握しなければ相続放棄(初めから相続人ではなかったことになります)や、限定承認(相続財産の範囲内で被相続人の借金を返済する方法)の手続きが必要なのか、相続税は課税されるのか、などの判断をすることができません。
特に相続放棄等の手続きは、「相続の開始を知った日から3ヶ月」と非常に短い期間のうちにしなければならず、原則的にはこの3ヶ月の期間を過ぎてしまうと単純承認(プラスもマイナスもすべての財産を相続すること)をしたことになり、マイナスの財産の方が大きければ被相続人の借金を返済しなければならなくなります。
ここでは大きく2つの相続財産について調査方法をご紹介します。
1つは不動産です。
不動産は、土地や建物のことです。
不動産を持っている場合、市役所から発行される固定資産の課税明細を見れば、ある程度把握できます。
ただし、課税明細はあくまで「課税される固定資産」について記載されるものですので、例えば一部の私道などの「課税されない土地」は載っていません。
相続手続きを進めるなかで、固定資産評価証明書が必要になることがありますので、この証明書を取得すれば基本的には課税されない非課税の土地も載っていますが、地域によって取扱いが異なり、載っていない場合もあります。
そのため、漏れなく把握するために、市役所の固定資産税課に対して「名寄帳の閲覧請求」をします。
「閲覧」請求と呼びますが、見るだけでなく写しを受け取ることができます。
この名寄帳には、請求した所有者の名義での、課税される土地、課税されない土地全てが載っています。
注意点としては、請求した市の管轄する土地以外は載らないということです。例えば隣の市にも土地を持っているなら、その市に対しても名寄せを請求しなければ、この方法で把握することはできません。
次に預貯金です。
預貯金は、被相続人が亡くなったこと、相続人であることを金融機関の窓口で証明すれば、不動産と同様に預貯金口座の「名寄せ」をすることができます。単に預貯金口座の照会と呼ぶ場合もあります。
手続きの方法は金融機関によって異なりますが、窓口で渡される所定の用紙に記入して請求します。このとき、その窓口の支店のみではなく、全支店において、国債や投資信託なども含め、被相続人名義での口座の全てを照会してもらいましょう。
基本的には、相続が発生したということは、口座が残っていれば解約などの手続きが必要になりますので、金融機関側としても漏れなく手続きをしてくれるものですが、海外の証券口座など、商品として扱ってはいるけど相続手続きの窓口が異なる場合など、こちらから聞かなければ見逃してしまう可能性もあります。
被相続人の口座がその金融機関にあるかどうかわからない場合は、例えば主要なメガバンク、被相続人の勤務先付近の金融機関、被相続人のよく利用していた駅付近の金融機関などにあたりをつけて、電話してみるとよいでしょう。
相続人であることを説明して、被相続人の照会に必要な情報を伝えれば、口座を持っているかどうかは答えてくれる場合があります。
また、日付を指定して預貯金残高を証明してくれる「残高証明書」の請求をすれば、この「名寄せ」をしてくれる場合もあります。こちらからの問いかけ方次第のところもありますので、しっかり全ての財産を把握できるよう、聞いてみましょう。
これらの預貯金口座の照会をお願いする手続きは、「戸籍の附票」で被相続人の過去の住所の情報も伝えた上で行うと、より正確です。名義や生年月日が一致しても、金融機関に届け出ている住所が違えば該当しない結果となってしまいます。
※名寄せや残高証明書の請求、つまり「被相続人が亡くなったこと」を伝えることで、口座が凍結されることに注意しましょう。公共料金の振り替えや地代・家賃等の受け入れ口座等なっている場合は、事前に準備が必要です。